遺産相続の開始

死亡届の提出

人が亡くなった場合、それを証明するために「死亡届」を提出します。 死亡届は火葬(または埋葬)許可証を受け取るために、期限までにきちんと出す必要があります。

死亡届は、正式には「死亡届書」と呼ばれ、記載されている人が死亡したことを証明する書類です。
死後7日以内に提出する必要がありますが、国外で死亡した場合はその事実を知った日から3ヵ月以内であれば受け取ってもらえます。正当な理由なく届出が遅れた場合、戸籍法によって5万円以下の過料を徴収されます。

死亡届・死亡診断書の様式

死亡診断書は「死亡届」と一体となっています。この用紙は全国共通です。添付のようにA3用紙の右半分が医師が記入する死亡診断書(死体検案書)になります。左半分は「死亡届」なので、役所に届ける際に記入する部分になります。

死亡届提出先の窓口

作成した死亡届は、下記のいずれかに提出します。

・お亡くなりになった場所の市区町村役場
・お亡くなりになった方の本籍地の市区町村役場
・届出人の住所地の市区町村役場
・届出人の所在地の市区町村役場

市区町村役場では、通常365日24時間休みなく死亡届の受付業務を行っております。
しかし、夜間や土日祝などの時間外に提出をすると、埋葬許可証を発行してもらうことができません。
これは葬儀後の火葬の際に必ず必要となるものですので、時間外に提出をした場合は改めて通常受付時間内に市区町村役場に行く必要があります。ご注意下さい。

近年では、依頼した葬儀社が提出の代行を行ってくれることが多いです。

年金受給停止の手続き(すみやかに)

提出先は、年金事務所または街角の年金相談センターです。

死亡届の必要書類
亡くなった方の年金証書
死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍抄本)、市区町村長に提出した死亡診断書

等になります。詳しくは年金機構のホームページへ。

介護保険喪失届

死亡日の翌日が第1号被保険者の資格喪失日となります。

市町村役場へ介護保険被保険者証の返却が必要になります。

世帯主変更届(14日以内)

市町村役場へ現在の世帯主から現在の世帯員の誰かに世帯主を変更する手続です。
残された世帯員が一人の場合、世帯主変更の届出が必要ありません。
それ以外の場合には、世帯主である故人が亡くなった日から14日以内に世帯主変更の手続が必要になります。

遺産相続の開始

年金・介護保険・役所届

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相続人の調査

遺言書の調査(自筆証書遺言)

被相続人が自筆証書遺言を作成していた場合、保管場所を生前どなたかに教えていれば比較的容易に発見できるかもしれませんが、誰にも伝えていない場合には、被相続人の身辺整理をする等の方法により探す他ありません。

また、見つかったとしても自筆証書遺言の場合には裁判所の検認が必要になります。遺言書(公正証書遺言を除く)の保管者または発見者は、遺言者の死亡を知った後遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。検認とは、相続人に対して遺言の存在およびその内容を知らせると共に、遺言書の形状、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。なお、検認を受けなくても遺言の効力に影響はありません。 

遺言書の調査(自筆証書遺言)

公正証書で作成された遺言書(公正証書遺言)であれば、平成元年以降のものについては、日本公証人連合会の遺言書検索システムを利用して、検索することが可能です。この遺言書検索システムは、日本全国の公証役場が対象となりますので、最寄りの公証役場から日本全国で作成された公正証書遺言を検索することが可能です。

遺言者の氏名や生年月日から過去の公正証書遺言の作成履歴をすべて検索してもらうことができるのです。
具体的な手続きとしては、相続人等の利害関係人が、「遺言者本人が亡くなったことを証明する戸籍謄本」及び「利害関係人であることを証明する戸籍謄本など」、ご自身の「身分証明書(運転免許証、パスポート等)」を公証役場に提示し、照会することになります。
公正証書遺言が存在した場合には、その場で謄本の申請をすることができます。
なお、遺言は、秘密保持の必要性が非常に高いことから、遺言者が生存中に遺言者以外の方がその存在を公証役場に確認することはできません。

無効になるケース

遺言を残せる年齢は、15歳以上と決められています。15歳未満の人が書いた遺言は無効です。
有効な遺言を作るためには、遺言を書く人自身に「遺言の内容を理解し、判断する能力」が必要です。この能力を「遺言能力」といいます。遺言能力がない人が書いた遺言は無効となります。
たとえば、ある高齢者が公正証書遺言を作成した当時、本人がアルツハイマー型の認知症にかかっていたというケースで、「遺言能力がない」として遺言が無効と判断された裁判例があります。

戸籍とは

遺産分割協議をするには相続人が誰かをはっきりさせる必要があります。相続人は親、子ども、兄弟姉妹などが考えられますが、実際に戸籍を見てみると被相続人が秘かに認知した子どもがいるとか、養子縁組をしていたといった事実が出てくることがあります。
そこで相続人を調査し、確定するために、まず「戸籍調査」を行います。

戸籍には「三代戸籍禁止の原則」というルールがあります。これは親、子、孫の三代は同じ戸籍に記載できないというものです。
例えばAさんに長男Bさんが生まれると、Aさんの戸籍に入ります。
Bさんが結婚(婚姻届を提出)したら、Aさんの戸籍からは抜けます。これを「除籍」と言います。
そして、Bさんは新たな戸籍の筆頭者になります。Bさんに子どもCちゃんが生まれたら、CちゃんはBさんの戸籍に記載されます。

除籍には2通りの意味があります。

まず、婚姻によって、親の戸籍を出て夫婦で新しい戸籍をつくる際、従前の戸籍で除籍されるという場合にも使いますし、死亡によって戸籍から除かれる場合のことも「除籍」といいます。

コンピュータ化されている戸籍では、個人の身分事項欄に「除籍」と印字され、縦書きの戸籍(紙の戸籍)では、名の欄に消除線が引かれます。

さらに、転籍で他の市町村に本籍を移した場合や、戸籍に記載されている全員が死亡や婚姻などで除籍になった場合には、戸籍そのものを「除籍」と呼びます。

この場合、戸籍の一番最初の欄外に、「除籍」と表示されます。

全員が「除籍」になったものは、除籍されてから150年間保存されます。

実家を出て違う地域で家庭を持つ場合、本籍地を現住所に移す場合があります。これを「転籍」といいます。

戸籍は法改製によって今までに何度か作り直されています。
例えば昭和32年に戸籍制度が改製され、家単位から家族単位に改製。平成6年に戸籍事務がコンピュータ化されて改製されています。

戸籍が改製されると結婚や死亡によって除籍されている人は、新戸籍には記載されません。
例えばAさんは昭和30年に前妻と離婚し、Kさんと再婚したとします。その後、Kさんとの婚姻関係が続いている場合、現在の戸籍には前妻の名前と×(離婚したこと)は記載されていないのです。(昭和32年の改製以降、記載がなくなります)
同じようにAさんに昭和60年生まれの子どもがいて、その子が平成3年に死亡した場合もその時点で除籍され、平成6年の改製後の戸籍にはその子の名前は載っていないということになります。
ただ、改製前の戸籍は「改製原戸籍」として残っています。

このように現在の戸籍だけでは故人の婚姻歴や子どもの有無などがわからないということになります。そのために相続人の調査には、故人(被相続人)の出生時にまでさかのぼって戸籍を調べる必要があります。

戸籍謄本の請求方法

戸籍証明(戸籍謄本・戸籍抄本・戸籍附票等)が必要な場合に、取り寄せる方法は、以下の2通りです。

①直接、本籍地の市区町村役場の窓口で申請する。
②郵送で本籍地の市区町村役場宛、請求する。

※戸籍証明は、本籍地の役所以外では、発行できません。
住民登録している役所と違う場合があるので、注意してください。

 

  • 申請用紙
  • 本人確認書類
  • 定額小為替
  • 返信用封筒

取り寄せる事ができる人は、以下の3通りです。

①本人、及び同一戸籍内の人(親子、もしくは配偶者)
②本人の直系血族の人(祖父母、親子、孫等)
③正当な理由があって、交付申請する人(本人から委任された代理人等)

※本人以外の家族が申請する場合は、本人との関係を証明する書類が必要になります。
同一戸籍の場合は必要ありませんが、別戸籍になっている兄弟が申請する時は、同じ戸籍にいた時点の除籍簿等が必要です。
又、祖父母の戸籍を請求するときは、祖父母の名前が載っている自分の親の戸籍が必要になります。

本人から委任された人は、委任状の原本も必要になります。

役所が戸籍を検索するポイントは「本籍地」と「戸籍筆頭者名」の2点です。

本籍地が分からない場合は、故人の最後の住所地の役所に「本籍地と戸籍筆頭者名の記載のある住民票(もしくは除票)」を請求すると、「本籍地」と「戸籍筆頭者名」が書いてあります。
戸籍謄本の場合は、戸籍簿全部の写しが発行されるので、「誰それの分」という指定は不要です。

戸籍証明には、現戸籍・改製原戸籍・除籍・戸籍附票等があり、それぞれに謄本・抄本があります。

相続手続で、戸籍証明の種類が不明な場合は、請求理由に相続手続の旨を明記し、備考欄に「出生からの全ての戸籍が必要」と書いておけば、その役所にある全ての戸籍簿を送ってくれます。

一般的には運転免許証ですが、運転免許証を持っていない人ももちろんいるので、その場合は役所の発行した写真付カードならば大丈夫です。例えば写真付住基カードやパスポートです。
パスポートの場合、郵送で戸籍請求する場合には、写真のページと住所を記載したページの両方をコピーして送ります。
健康保険証や年金手帳は2点提出する必要があります。又健康保険証には住所が記載されている必要があります。

相続人関係図の作成

相続人関係図を作成しておけば、金融機関等で相続手続きを行うときに相続人の状況を説明するときに役立ち、不動産の名義変更などでは法務局が戸籍と照らし合わせて確認を行い、間違いがなければ戸籍の原本を還付してもらうことができます。

相続財産の調査

財産調査の重要性

相続人が確定しても、財産調査をしっかり行わないことには、遺産分割の話合いを進めることができません。万が一、遺産のリストに漏れがあると遺産分割のやり直しが必要になる場合もあります。

相続放棄が必要な場合、原則として被相続人が亡くなってから3か月以内に裁判所に申し立てて行わなければならないため、債務が多い時は、相続放棄の申し立てが必要かどうか早期に判断する必要があります。

相続税の申告が必要な場合には、10ヶ月以内に税務署に申告書を提出しなければなりません。

のちのちの手間や面倒を起こさないためにも、被相続人の財産をきちんと把握することは、とても大切なことなのです。

財産の調査

故人が公正証書遺言や財産目録をきちんと残している場合には比較的スムーズに調査は進むでしょうが、明確な証拠書類が残されていない場合が多々あります。

通帳やカードが見当たらず、故人がどの金融機関に口座を保有していたか不明な場合には、被相続人宛の金融機関からの郵便物等が手掛かりになります。
まったく手掛かりがない場合には、故人の生前のライフスタイル等も考慮して、生活圏内にあった金融機関に必要な書類を持参し、故人名義の口座の有無を照会します。
 
仮に照会をかけた支店に口座がなくても、その金融機関のいずれかの支店に口座が存在していれば回答が得られますので、残高証明書あるいは取引履歴の開示を請求することができます。
ネットバンキングについては、郵送物や生前のパソコンの使用状況等で口座の存否を確認することになります。
 
残高証明書を請求する際に必要な書類
  1. 被相続人の死亡の事実を確認できる戸籍謄本等
  2. 請求する人が相続人であることを確認できる戸籍謄本等
  3. 請求する相続人の印鑑証明書と実印
  4. 残高証明書発行依頼書(各金融機関で入手できます)
   ※ 金融機関によっては多少異なる場合がありますので事前に確認が必要です。
取引履歴の確認方法
 
通帳の一部又は全部が残っていなかった場合、過去の取引履歴(入出金)の明細を調べるために、金融機関に対して口座の取引履歴の開示請求をする必要があります。
 
これにより、相続開始以前に特定の相続人が勝手に故人の預貯金を引き出していた等の事実を確認することができます

不動産の調査方法として、被相続人の名寄帳を取得するという方法があります。

名寄帳とは

名寄帳とは、ある人(法人を含みます)が所有している不動産の一覧表です。

名寄帳の記載事項

名寄帳には土地・家屋の所在、地番面積評価額課税標準額税額等の記載があります。

名寄帳の取得

名寄帳は、不動産のある市町村役場で取得することができます。

東京都の23区に不動産があるときは、都税事務所で取得することができます。

名寄帳と評価証明書、公課証明書の写しの違い

評価証明書は固定資産の価格(評価額)を証明するものであり、公課証明書は固定資産税の税額を証明するものです。(評価証明書の記載内容は、公課証明書にも記載されます。)
 名寄帳の写しは、証明を目的としたものではなく、所有している物件の明細を確認するためのものです。(記載内容は納税通知書に添付している課税明細書と同じです。)
 いずれの証明書も証明書の年度の1月1日の状態を記載しています。

道路等のように課税されていない不動産は、名寄帳には記載されますが、評価明細には記載されません。

しかし、当該不動産も相続財産の一部なので、分割協議を行う必要があります。このため名寄帳の確認は重要なのです。

金融機関が銀行ではなく、証券会社が対象になること以外は、基本的に預貯金の場合と同様の調査方法、対応になります。

まず取引があったかどうか、取引があった場合、該当の証券会社等へ残高証明書の発行をお願いすることになります。

 

通帳が存在しない

株式や投資信託と預貯金の大きな違いは通帳が存在しない点にあります。通帳の代わりに取引の都度もしくは定期的に、取引明細が送られてきますが、全て保管している方は珍しいので、通帳のように網羅的に取引内容を把握するのは困難な場合が多いです。

顧客勘定元帳

顧客勘定元帳は、取引に伴う精算金額が記載された法定帳簿です。

顧客勘定元帳のサンプル

株式取引(信用新規は除く)の売買および入出金の履歴が記載されています。

この顧客勘定元帳が通帳の代わりになる書類ですが、取引明細と異なり、発行を依頼しないと作成してくれません。また発行手数料が発生する場合も多いです。

端株(単元未満株)の相続

株の相続手続で見落としがちなのが、この単元未満株式の相続手続です。というのは、平成21年1月5日の株券電子化後、上場会社の株式は、基本的に証券会社の口座へ移管されましたが、売買の取引単位である単元に満たない株式、いわゆる単元未満株式は、証券会社には移管されず、もともとの株主名簿管理人たる信託銀行に、特別口座というかたちで残ってしまいます。


そこで、単元未満株式の相続手続には、信託銀行に対して、信託銀行管理の特別口座を承継人の口座に振り替える手続きを行うか、相続を機に単元未満株式を相続を機に時価で買取ってもらうか、いずれかの手続きを行う必要があります。

特別口座は株式の取引口座ではないことから、発見することができず、相続財産から漏れるケースも多いです。

生命保険の調査は、故人が生命保険に入っていた場合「保険証券」や「生命保険料控除証明書」などの書類から判明します。

どうしても書類が見つからない場合は、銀行の通帳を確認してみると保険料が引かれている場合がありますのでそこから判明することもあります。

ただし、受取人指定の保険金は原則として遺産分割の対象とはならないというのが最高裁の判例です。

債務の調査

借金する場合、借り入れの契約書(金銭消費貸借契約書)を目立たない場所で保管していることも多いです。

とくに消費者金融からの借金のときには、契約書自体を破棄してしまっていることもあります。この場合、支払いが滞ったことで請求書や督促状が郵便で届くことにより借り入れの事実を知ることもあります。

全ての債権者がすぐに督促状などを送ってくるとも限りませんから、複数の借入先があると予想される場合には個人信用情報機関で、信用情報の開示を受ける方法もあります。

銀行、信用金庫などの金融機関、クレジットカード会社、消費者金融などの貸金業者は、正規の業者であれば全て個人信用情報機関に加盟しています。貸し付けをした際には、その旨を信用情報に登録しますから、個人信用情報の開示を受けることで、どこから借り入れをしているかを知ることができます。

主な加盟企業 信用情報機関 問い合わせ方法等
消費者金融 株式会社日本信用情報機構
(略称:JICC)
JICCのデータ照会方法
クレジット会社 株式会社シー・アイ・シー
(略称:CIC)
CICのデータ照会方法
銀行 一般社団法人全国銀行協会
(略称:KSC)
KSCのデータ照会方法

調査に時間がかかる場合には裁判所に伸長願いを出す

相続放棄は相続開始時点から3ケ月以内に家庭裁判所に申し出(申述)する必要があります。
 しかし、上記の各点についての調査をするには時間がかかります。
 そのため、とりあえずは裁判所に相続放棄申述の期間延長願いを出しておくといいでしょう。
 通常は、3ケ月の延長ならほぼ無条件で出ますし、その後も事情によっては同様の期間延長してくれる場合もあります。
 その伸長された期間を利用して、調査をした上で、相続放棄をするかどうかの最終決断をされるといいでしょう。

相続方法の決定

相続方法の決定

相続方法の3つの手続き

相続人は「相続の内容を決定する権利」を有しています。わかりやすく言えば、「被相続人の権利義務を相続するかしないか」、また「相続するとしてどこまでの範囲で被相続人の権利義務を承継するのか」ということを自由に決定できる権利を持っているということになります(※ただし、資産と負債がある場合に、資産だけを相続するというような選択はできませんのでご注意ください)。

このような権利を背景に、相続方法には、単純承認・相続放棄・限定承認の3種類の方法が存在します。

単純承認

相続の開始を知ったときから3ヶ月以内熟慮期間)に限定承認の手続きをとらない場合、自動的に単純承認となります。

単純承認になるケースは、下記のような場合もあるので注意しましょう。

  • 相続人が、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に限定承認又は放棄をしなかった場合 
  • 相続人が、相続財産の全部又は一部を処分した場合
  • 相続人が、限定承認又は放棄をした後でも、相続財産の全部若しくは一部を隠しこみ、私的にこれを消費し、又は悪意でこれを財産目録に記載しなかった場合

※上記の場合、たとえ相続する意思がなかったとしても、自動的に単純承認となります。

限定承認

マイナスの財産の方が多いものの、どうしても相続したいプラスの財産がある場合に用いられる方法です。 
また、個人商店などの事業を営んでいた方の相続等、プラスとマイナスの財産が複雑に入り組んでいる場合などにも適しています。

ただし、限定承認をするためには、いくつか条件があります。

  • 相続人が相続開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に限定承認の申立をする必要がある。
  • 相続人が複数名いる場合、相続人全員が一致して行う必要がある。  

もしも3ヶ月を超えてしまった場合、原則としてプラスとマイナスの財産もすべて相続する「単純承認」をしたとみなされます。ただし、3ヶ月過ぎてしまっても、条件によっては相続放棄できる場合もあります。

相続放棄

相続をする、すなわち財産を引き継ぐということは、一見良いことのようにみえますが、マイナスの面もあります。たとえば、借金を相続する場合などです。

現在、不景気で多大な借金を相続してしまうというケースが増えています。 
そのような事態を防止するために、相続人がそれらの財産・借金の相続を「引き継がない」と申請することができます。 
これを「相続放棄」といいます。基本的には相続対象となる資産の全てを相続放棄できます。

相続放棄は下記のようなケースで利用されます。

  • 被相続人の財産がほとんど借金など相続に利点がない場合
  • 家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退する場合

遺産分割

遺産分割

遺産分割手続

相続人の間で争いが起きないように、また相続人に公平に遺産を分配するため、法律では法定相続分が定められています。しかし、何が何でもこのルールに従って相続しなければならないわけではなりません。

相続人全員の合意があれば、遺産をどのように分割しても構いません。この具体的な遺産の分け方を相続人全員の話し合いで決めることを遺産分割協議と言います

遺産分割には「遺言書」どおりに分割する方法のほか、「遺産分割協議」「遺産分割調停」「遺産分割裁判」がありますが、よく利用されるのは、「遺産分割協議」です。

遺言書

基本的に遺言書があり、その中に遺産の相続に関することが記載されていた場合、その内容に沿って遺産を相続、分配などを行う事になります。この遺言書の効力はとても強いもので、故人が生前に、自分の持ってる遺産をどの様にするべきかをあらかじめ決めていたわけですから、相続をする側はその意志に従い、遺言書通りの遺産相続を行う必要があります。

遺産の相続には遺言執行者という遺産の相続手続きを進める人が必要になるのですが、遺言書に遺言執行者に関する記述があれば記載されている人が執行人の役割を担うことになります。もし記載されていない場合には、相続する人で協議を行い、信頼できる人や公平な第三者などに依頼をする必要があります。

遺産分割協議

遺産分割協議とは、相続が発生した際、被相続人による遺言書がない場合に相続人全員で遺産分割に関する話し合い(協議)を行うことを、遺産分割協議と言います。

相続人同士の話し合いで遺産の分割方法や、だれが何を相続するかを決めるための第一歩になります。

分割協議は、必ず相続人全員で行わなければなりません。相続人に未成年者がいる場合は、その代理人の参加も必要です。相続人が1人でも欠けた状態で行うと、その結果は無効となります。
また、あとで問題が起こらないよう、協議の結果は書類に残すとよいでしょう。この書類のことを「遺産分割協議書」といいます。

遺産分割調停

遺産分割調停とは、遺産分割協議において相続人の間では話合いがつかない場合などに、家庭裁判所の遺産分割調停又は審判の手続をすることを言います。

遺産分割調停では各相続人からの事情を確認し、必要に応じて資料等を提出してもらうなど、事情をよく把握したうえで、各相続人がそれぞれどのような分割方法を希望しているか、またその分配比率などはどうしてほしいのかを聴取し、合意を目指し話合いが進められます。

話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,裁判官が,遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して,審判をすることになります。

遺産分割裁判

遺産分割調停でも話がつかなかった場合、遺産分割審判(遺産分割の裁判のことです)に自動的に移行されます。別途で審判申し立てをする必要はありませんので、そのまま調停員の指示に従ってください。

遺産分割事件には調停前置主義(いきなり裁判をすることはできず、まず調停をして解決できなかった場合に初めて裁判を起こせるという制度)はありません。

このため、初めから「調停」または「審判」の手続きを申立てることも可能ですが、いきなり裁判を申立てようとしても、まずは調停を申し立てて、裁判所の関与の下でできるだけ話し合いによる解決を図るよう促される可能性が高いです。

遺産分割方法

遺産分割協議で議題になるのは、相続人の誰に、どのように、相続財産を分けるか、です。

預金が占める割合が大きい場合には、1円単位まで分けることが可能であるため、協議もスムーズに進む場合も多いですが、不動産が占める割合が大きい場合には、どのように分けるか揉める可能性もあります。

分けることが難しい財産を、揉めるのを避けるために、安易に共有で分割・保有してしまうと、売却などの処分時に、連名での契約が必要になるなど、処分に手間がかかります。

株券の場合には、端株・単元未満株式となるような分割にしてしまうと、市場での売却ができない場合も出てきます。

将来の処分のやり方も考えて分割方法を選択する必要があります。

現物分割

「不動産は長男に、株は次男に、預金は妻に」というように、個々の遺産をそのまま分割していくことを、現物分割といいます。

現物分割は、分かりやすく手続きも簡単で、遺産をそのまま残せるというメリットがありますが、遺産を公平に分けるのが難しいというデメリットがあります。

代償分割

「土地を長男が取得する代わりに、長男は次男に500万円支払う」というように、ある相続人が遺産を多く取得する代わりに、別の相続人にお金を払うという方法を代償分割といいます。

これにより、遺産を細分化せずにそのまま残せると同時に、遺産を公平に分けることができます。

換価分割

遺産の種類によっては、現物分割を行うことが適当でないケースがあります。このような場合に遺産を他に売却して金銭に換え、この金銭を相続分に応じて分割する方法を換価分割といいます。

換価分割では、売却時に譲渡所得や各種手数料が発生する場合もあるため、分割協議書への記載方法も注意が必要です。

相続財産の名義変更・相続税申告

相続財産の名義変更

名義変更の手続き

相続する財産が決まったら、その財産を自分の名義に変更する手続きを行います。土地建物などの不動産や預貯金、株式、借地権や借家権、自動車、ローンなど、財産の種類に応じて手続きとその方法はさまざまです。

例えば、不動産を相続する場合には、法務局で「相続による所有権移転登記」の手続きをして名義を書き換えることになります。この登記の手続きをしないままでは、所有権を客観的に証明することができません。

また、手続きに必要な書類も相続財産によって異なります。
被相続人の除籍謄本(全部事項証明書)・相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)・相続人の住民票・相続人の印鑑証明書の4つはほぼすべての手続きに共通なので、あらかじめ数通ずつ用意しておくとよいでしょう。

名義変更が必要となる手続一覧

名義変更が必要な手続きは、不動産・銀行口座などがイメージされますが、下の表にも一部記載しているように、相続人の方が対応しなければいけない手続きは、結構数多くあります。

◇公共料金

電気・ガス・水道など各事業者に連絡をし、必要書類を取り寄せる必要があります。平日日中しか受け付けない会社等も多く、また電気・ガス自由化で、連絡先の把握もこれまでよりも大変になってきています。

◇クレジットカード(カードローン)

引き落とし口座が凍結されるとクレジットカードの請求は、相続人が負担することになります。共同相続人がいる場合は、相続分の割合に応じて金銭債務も相続することになります。

この債務を引き継がない(相続放棄)、もしくは財産の範囲内で相続(限定承認)、するためには、3ヶ月以内に家庭裁判所へ申請する必要があります。時間的余裕はあまりないため注意が必要です。

◇自動車

管轄の陸運支局での手続きが必要になります。相続人が自分の名義で乗る場合には、原則として「車庫証明書」が必要になり、売却する場合でも、一度は相続人名義にしないといけない上に「譲渡証明書」も必要になります。

陸運局の担当者により対応が異なる場合もあるので少々面倒です。

◇パスポート

パスポートには有効期限があるので、手続きは必須ではありませんが、悪用等を防ぐために、各都道府県の旅券課で手続きをして、返却もしくは無効化の手続きをする必要があります。

 
 手続届出先 
1公共料金電気・ガス・水道の各事業者 
2NHKNHK(電話もしくはインターネットでの手続) 
3預貯金口座各銀行 
4貸金庫契約銀行 
5株券・投資信託証券会社・信託銀行 
6出資金信用金庫・農協 
5固定電話NTT 承継加入権
借地権・借家権地主  
賃貸住宅家主 
ゴルフ会員権該当ゴルフ運営会社 
火災保険損害保険会社 
10 自動車 運輸支局自動車取得税
11 自動車保険損害保険会社 

当事務所ができること

当事務所ができること

相続手続きの全てを行います

これまでご説明したように、相続手続は限られた時間内で、時に膨大な資料の中から手掛かりを発見する必要があります。

家中を捜索し、やっと手掛かりを発見したと思いきや、今度は各機関との問い合わせや書類のやりとりに忙殺されることとなります。思いもよらぬ資料の発見で、何度も戸籍のやりとりをすることも多々あります。

普段お元気な方でも、故人を想い気落ちしている中で手続きを行うことに抵抗を感じる方を拝見してきました。

税務面で申告や生前対策を行い、登記業務もワンストップで提供して参りましたが、相続人の方の負担を少しでも軽くしたいとの思いから、本人しか行えない事項(印鑑証明の取得等)以外の全てを代行することと致しました。

税務や登記に関わらない相続も含め、広範囲に対応させて頂きます。

相続税の申告は必要ないのですが

当事務所は、申告が必要ない方でも、また、登記が必要ない方でも、相続手続を行わせて頂き、相続人の方の負担を少しでも軽くするお手伝いを行っております。

出来るところまで、自分で行いたい。

もちろん、構いません。時間に余裕がある場合は、相続人ご自身で行う方が望ましいです。当事務所はお役に立てる範囲で関与させて頂きたいと考えております。

費用はどのくらいかかるのでしょうか。

相続手続は亡くなった方の多様な財産が対象となり、定型化できない作業も多いです。この点、当事務所は料金表にもとづき、作業させて頂きますので安心です。

料金表(相続手続)

より詳しい内容はお問い合わせ下さい。

基本料金

30万円~

丸投げで大丈夫です!

料金目安表

ご遺産総額が5000万円を超える場合の目安表です。
相続財産価額ご相続人1名ご相続人2~3名ご相続人4名以上
5千万円以下相続財産価額
×1.0%
相続財産価額
×1.2%
相続人1名につき
左記金額の10%増

5千万円超

1億円以下

相続財産価額
×0.8%
相続財産価額
×1.0%

1億円超

2億円以下

相続財産価額
×0.6%
相続財産価額
×0.8%

2億円超

3億円以下

相続財産価額
×0.5%
相続財産価額
×0.7%

お気軽にお問い合わせください。072-685-0088受付時間 9:00-17:00 [ 土・日・祝日除く ]

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